19世紀後期~1900年頃のフランスの「ルグラ・モンジョワ〜サインピース」の花瓶をご紹介致します。
「ルグラ」とは、フランスの19世紀中頃から1900年代初期まで存在したフランスのガラス工房です。
この花瓶は底に金彩で「ルグラ」の刻印の一つ「モンジョワ」のサイン入り、
19世紀後期から1900年頃のジャポニズム様式のお品です。
(「ルグラ」や技法について詳しくは下方説明をご覧下さい。)
高さ22cm、6cm四方、パート・ド・ヴェール製の筒型で、文様はイリスの花、
イリスの花は印象派の画家達が好んで描き、アールヌーヴォー時代のガラス作家達、ラリックやガレ、ドームなどにも好まれました。
この花瓶の表面全体には、「カメオ」と言われる凹凸の深いアシッド・グラビュールと、エマイユ彩と金彩で作ってあります。
360度、
口には水が流れるような文様が、イリスと同じく「カメオ」と言われる凹凸の深いアシッド・グラビュールと金彩であります。
最大の厚み4.5mmの口で、花瓶は花生けに最適な程よい重さです。
底には、ルグラ工房のサインのひとつ「モンジョワ」の金彩刻印入り、
イリスの花の凹凸面に施された「ルグラ」独特のエマイユ彩と金彩をご覧下さい。
重厚な質感がまるで油絵のよう、葉や茎の表現や、花びらのエマイユと金彩を混ぜ合わせながら、何度も焼成しこのような色合いを出しています。
オーロラのように混ざり合った色彩は、印象派モネの絵を思わせますね♪
背景は透明のパート・ド・ヴェールで、
花と同じようにアシッド・グラビュールで水のさざ波のような凹凸模様がほどこしてあります。
花瓶だけを飾り、光があたると渋く輝く色合いを楽しむのも良いですし、
ブーケはもちろん、一輪の花や枝をいけても綺麗です。
フランスの19世紀ならではの、パート・ド・ヴェールの花瓶です。
*カケ、割れ、傷などなく綺麗ですが、19世紀後期~1900年頃のお品です。
洗う場合は、模様部分等は出来る限り擦らずに柔らかい布などで洗浄して下さい。食器洗浄機、乾燥器、熱湯などはお避け下さい。
* ルグラ工房
ルグラは1839年生まれのフランス人、フランソワ=テオドール・ルグラが発展させたガラス工房です。
パリ北方の、クリシーなどクリスタルガラスやガラス工房が存在した地区にありました。
フランソワ=テオドール・ルグラは20歳でガラス工房に入り、素晴らしい技術力と才能で、27歳の時には工房責任者、そして「ルグラ」と「サン・ドニ ガラス&クリスタルガラス工房」の経営者になりました。(下の写真:楕円の人物がフランソワ=テオドール・ルグラ)
当時のガラス工芸の技術革新に尽くし、特にパート・ド・ヴェールのオブジェへ、アシッドグラビュールを施し凹凸で模様を付けた作品を得意としました。
ルグラのアシッド・グラビュールは、「アシッド・グラビュールのカメオ」と言われるように凹凸の深いもので、文様を浮き立たせ、エナメルや金彩で色彩をつけます。
素材の「パート・ド・ヴェール」とは練り粉ガラスのことで、鋳型へ「ヴェール」と呼ぶガラス粉と粘着剤を練った物を入れ、窯で焼成し、冷えた後に表面を研磨やアシッド・グラビュールで仕上げ、その上へエマイユや金彩を施します。
「パート・ド・ヴェール」の作り方は陶磁器と似ているため自由な形が可能で、その上出来上がりはガラスの透明感がある技法です。
ガラス作家にとっては、色や素材感を自由に作り、細かいところまで色を付けることができるため、19世紀後期にはガレやドーム、ラリックなど多くの作家達がこの技法で作品を作りました。
また「パート・ド・ヴェール」の技法は、古代ローマ時代に発明されたものですが、その後は途絶え、技法もわからなくなっていましたが、19世紀中頃に再び研究され甦りました。
しかし各工房での技術は秘密でしたので、20世紀初めに工房が閉じるとまた幻の技法になってしまったのです。
今では再び技法の開発はされているようですが、19世紀当時のアールヌーヴォーやジャポニズムの独特の色彩や素材感が難しいのは、当時は今ではもう禁止されているような薬剤や素材を使っていたことや、今ではもう判らない材料の混合や色の技法が秘密だったためです。
フランソワ=テオドール・ルグラは、経営者としても才能があり、小さかったガラス工房を1870年代には2万平米の工房、1400人の職人、150人の装飾家を抱えるまでに発展させました。
「ルグラ」のお品には階級があり、どれもルグラ独自のデザインや作り方で判別できますが、サインのないものも多くあります。
その中でサインの入っているものは、技術やデザインが優れた物とされ、サインは「L」「サン・ドニ」「モンジョワ」の3種類があります。
この3種類のサインは、1909年以降は使われず、違うサインに変わります。(上の画像の青矢印のサインは、この花瓶にあるものです。)
フランソワ=テオドール・ルグラは1916年に逝去し、工房はその後まもなく幕を閉じました。
* アシッド・グラビュール
加工しない部分を防腐剤で覆い、模様を削り取った後フッ化水素酸と硫酸の混合液で残りのガラス表面を溶解し凹凸模様を出す技法(腐食技法)。この技法は1771年に開発されましたが19世紀中期頃からよく使われるようになった。
アンティーククリスタルのアシッド・グラビュールは現代の品に比べて非常に細かく繊細なもので、模様も今に見られない独特な美しさを持っている。
*金銀彩
主に18世紀から19世紀後期の王侯貴族の注文品であったオブジェに見られる。バカラやサンルイ、クリシーの金彩は厚みがありハイキャラットゴールドを使用、100年を超えてなおその色と繊細な絵をとどめている。
N.1041イリスの花 ジャポニズムの花瓶 ルグラ・モンジョワ〜サインピース/アンティークガラスフランス 19世紀後期~1900年頃
素材:ガラス・エマイユ・金彩
サイズ:H22cm x W6cm x D6cm
価格:Sold-
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