( オルセー美術館ダニエル・デュピュイ保存作品カタログより )
プレートは「レリーフ(浅浮き彫り)」で、
金銀、ブロンズなどの素材で作品として多くは作らない場合、
単なる鋳造ではなく、ジュエリーへ施される彫金と同じように、
原型を作った後に、彫金師が表面効果、燻加工、艶出しや艶消しなどの
細かいディティールを仕上げたお品です。
当時からコレクションのオブジェとして、飾り棚へ置いたり、ダブルフェイスのフレームへ飾りました。
表側は「古代型水盤の傍のクロエ」、
クロエとは、
2〜3世紀のローマ時代に、当時属州であったギリシャの作家ロンゴスによって
古代ギリシャ語で書かれた「ダフニスとクロエ」という物語の少女で、
古代ギリシャ時代の牧歌的なレスボス島を舞台に、孤児の少女クロエと羊飼いの
少年ダフニスの純な恋からはじまる争い、困難、危機を超えて結ばれる物語です。
この物語は、ロンゴスがギリシャのレスボス島で見たニンフの聖なる木の絵に
インスピレーションを受けたと伝えられ、「ロンゴスの牧歌物語」とも呼ばれています。
驚くことに全4巻が保存されており、ルネサンス時代の1559年に、
フランスの文人ジャック・アミヨがフランス語に翻訳し、初めてヨーロッパへ紹介されました。
その後フランスの文学者ポール=ルイ・クリエールが1810年に再翻訳し、
古代ギリシャの美しい物語として、19世紀の古代様式の流行とともに、
フランスの絵画や彫刻、音楽、バレエのテーマとなったのです。
表面は、
クロエが月桂樹のかたわらにある、古代型水盤に注ぐ水を飲んでいる姿です。
水は古代ギリシャ劇の仮面型の流水口から水盤へ注いでいます。
背景にある月桂樹は常緑樹で、古代より「永遠の命」のシンボルです。
反対側は「泉に手を添えるアモル」の図で、
アモルは愛の神で、クロエが飲む水へ愛と命を与えるというシンボルです。
若く美しいクロエが命の水を飲むことから、
ダニエル・デュピュイがこのプレートで
表したかったテーマは「永遠の若さと生きる喜び」であることがわかります。
ダニエル・デュピュイのDをシメントリーに配したモノグラムの刻印が
クロエの頭部横にあり、足元にはダニエル・デュピュイのサイン、
アモルの側にも右下にダニエル・デュピュイのサインがあります。
16歳から芸術を学び、22歳でグランプリを受賞した、
ダニエル・デュピュイの卓越した美意識と技術力は、
水に手を漬けるアモル、
流水の中の指先、
風に吹かれるアモルの髪や表情、
銀という金属製にもかかわらず、水や髪、肌の質感や
柔らかなクロエの表情、浮出しの凹凸による遠近の出し方など、
わずか2.5mmの厚さの浅浮き彫りに示しています。
クロエやフレームのの縁取りなどには燻仕上げが施してあり、
銀の光沢部分と、より一層陰影をつけています。
古代型水盤に絡まる蔦や森の草木、実をつけた月桂樹の木肌の表現は10倍に
拡大しても流れるような線が美しいものです。
底側面にはフランス銀刻印と
アルファベットでのフランス語の「銀」文字の刻印があります。
厚みは2.5mm、重量56.2gです。
(絵画 ダフニスとクロエ ガストン・ルノー作 1881年 )
繊細な凹凸感のある浅浮き彫りと、銀のシックな輝きが魅力で♪
飾り棚へ飾っても良いですし、
いにしえのように、両面から見えるフレーム仕立てにされるのもお薦めいたします。
泉、水の流れ、月桂樹、森、といった瑞々しいシンボルで満たされており、
ダブルフェイスで楽しめる、まさに小さな美術品です。
*画像通り目立つ傷、カケ、破損箇所などは見られませんが、19世紀末のお品です。
800/1000の銀製のお品で、酸化などはしにくいですが、長年でくすみや酸化が木になる場合は、表面の細かい彫金仕上げや燻加工を施してありますので銀磨き布での摩擦などはなさらず、強い溶剤ではなく、銀製品専用の研磨剤の少ないクリーム状のお手入れ用品などで軽く磨くのをお勧め致します。
N. 1241 古代型水盤の傍のクロエ 〜ダニエル・デュピュイ作 銀製プレート・ダブルフェイス/アンティークオブジェ
フランス 19世紀末
素材: 銀(フランス銀刻印/猪の頭型+フランス語の「銀」文字刻印入り)
サイズ:L6.6cm W3.5cm D0.25cm
価格:10万円
* お問い合わせの際は、お手数ですが上記の品番と品名をお書き添えください。
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by Page-Marie-Louise
| 2021-04-02 03:18
| オブジェ