大変珍しいクロスをご紹介します。
幅164cm、長さ230cmの19世紀のリネン製、
このサイズは、フランスではベッドカバーやテーブルクロス用として作られました。
珍しいのはルネサンス時代のスタイルであること、
全てハンドメイド、
ネット刺繍とリネン手刺繍です。
ルネサンス的な様式に、
約8cm角のリネン刺繍とネット刺繍レースを、手仕事でパッチワーク式に繋いでつくられていることがあります。
16世紀のベッドカバーにはこのようなスタイルのものがあり、
現在パリ装飾美術館に保管されています。
ネット刺繍レースとは、四角い編み目ネットレースに刺繍を施したもの、
古代からネットレースはありましたが、これに刺繍を始めたのは16世紀、ルネサンス時代です。
このクロスはルネサンス時代のレース&刺繍モチーフを再現したもので、
ネット刺繍レースには、沢山の動物達が刺繍されています。
画像をご覧下さい。
白鳥、鷲、犬、牛、ライオン、孔雀、猿、豹・・・
そして想像上の動物達、
竜、キマイラ、
そして、雪の結晶のような模様がいろいろ、
中央近くの大きなパーツのネット刺繍には、
大鹿、
鳥やルネサンス模様で飾ってあります。
リネン刺繍には、ルネサンス模様がアイレット刺繍(オープンワーク)で現してあります。
古い時代の十字架模様も取り入れられています。
クロスの周囲は三角形のネット刺繍レースがフレームの様に取り巻いています。
全ての三角形には動物の刺繍があり、
ウサギ、鳥、蝶々・・・
真ん中と縁取りの間は、「プント・イン・アリア」と呼ばれるルネサンス時代のニードルポイントレース(針で作るハンドメイドレース)です。
「プント・イン・アリア」とは、ニードルポイントレースの初期の様式で、
幾何学模様が多く、16〜17世紀にリネンで作られました。
中央に四角のパッチワーク、
その周りを「プント・イン・アリア」レースが取り囲み、
その周りを大鹿のネット刺繍レースとリネン刺繍、
また「プント・イン・アリア」レースが取り囲み、
四角のパッチワークで取り囲み、
また細めの「プント・イン・アリア」レースが取り囲み、
外側が三角形の動物達のネット刺繍レースという組み合わせです。
動物達の物語を刺繍で描いたような、
19世紀のフランスの、
全て手仕事のリネン・クロスです。
(クリーニング済)
*手洗い可、デリケート用洗剤で優しく手洗いの後、軽く脱水し80%くらい乾いた段階でアイロン掛けをして下さい。
*傷、破れ、裂け、シミなどはありませんが、アンティークのお品です。
N.0214 ルネサンスの動物達・手刺繍&レース/アンティークレース・リネン
フランス 19世紀
素材: リネン
サイズ:L230cm x W164cm
価格:18万円
* お問い合わせの際は、お手数ですが上記の品番と品名をお書き添えください。
▶トップへ戻る * フランスのアンティークリネンとは?
ご存知でしょうか?
「リネン」は、夏は涼しく、冬は暖かい繊維です。
歴史は古く、すでに紀元前の古代エジプト時代には使われ、古代ギリシャ・ローマ時代にも存在していました。
ヨーロッパには古くからの「リネンの文化」があり、布地の名前だけではなく、寝具やクロス、寝間着に下着まで、すべてを総称して「リネン」と呼びます。
紀元前から培われた「リネンの文化」は、今でも深く人々の暮らしに存在しています。
18世紀には、インドから「コットン」が輸入され流行しますが、貴婦人達の寝具や下着は常に伝統のリネンのみ、今でも上質好きなパリジェンヌには大変好まれる素材です。
また、日本で一般に言う「麻」とは植物が違い、「リネン」は「亜麻」からできる繊維で、ヨーロッパでは四季を通じて愛される素材です。
いにしえの特に上質な「リネン」は、フランドル地方(現在の北フランス、ベルギーからオランダ地圏)の泥炭な土地で栽培されました。
冷感多湿の厳しい気候条件で育つ強靭な亜麻は、非常に細く長い繊維を作り出します。
その亜麻を、古くは手仕事で、後世には人の手のかかる機械で紡ぎ、織って作られたリネン地は代々の財産とされました。
結婚式には「持参金の一部としてのリネン一式」を揃え、王侯貴族や大ブルジョワ達の財産目録には、どれだけの数と質のリネンやレースが揃っているかを記され、代々受け継がれていきます。
「リネン」は古代エジプトの遺跡から発掘されるほど、数千年を土の中で過ごしても崩れないという大変強靭な繊維です。
古いハンドメイドのレースは全てリネン製で、400年以上経てもなお美しいままですが、その繊維の質の強さが見て取れます。
上質のリネンは、使うほどに、肌触り良く柔らかくなります。
吸湿性、速乾性に優れているため、夏は冷んやり気持ちよく、冬は保温性があり暖みのある素材なのです。
ヨーロッパでは、ひいおばあさまのお嫁入りリネンが、孫のおくるみになります。
フランスの産院では、しっとりとした艶のある柔らかそうなリネンに包まれた、幸せそうに眠る赤ちゃんが見られます。
何度も洗い100年を越えたリネンは、赤ちゃんの肌を守るのにふさわしい柔らかな生地に変わっていくのです。
最も強い繊維の王様が、最もか弱い存在を守るまでに変化し使われていくのですね。
日本の浴衣が、何度も洗われ柔らかくなり、最後は赤ちゃんのおむつになるのと同じ歴史です。
20世紀初期、デザイナーとして成功した”ココ・シャネル”がこんな言葉を残しています。
「リネンのシーツで眠り、リモージュのカップで朝のお茶を飲めたら、人生は最高」と。
リネンはヨーロッパの人々にとって文化であり財産であり、快い暮らしに欠かせないものです。
残念ながら現在では質の高いフランドル産の亜麻や、細い糸で織り上げるフランスの美しい織りとデザインの上質リネンは途絶えてしまいましたが、アンティークでは美しいお品が少ないがらも残っています。
パァジュ・ド・マリールイーズでは、そんなお品をご紹介していきます。