19世紀中後期、ナポレオン3世時代のカラフ(デキャンタ)ペアとグラス4客セットをご紹介致します。
カラフには当時ならではの銀細工のフレームを嵌めてあるお品で、
パリの金銀細工工房が制作し、
クリスタルガラスは、当時のバカラ、又はサン・ルイ、クリシーなどの
フランスのクリスタルガラス工房で作られたものと考えられます。
銀製の各フレームには工房刻印と、フランス銀刻印(800/1000)があります。
19世紀らしい細かいクリスタルタイユを施したお品で、
フレームはルネサンス様式の見事な文様を描いたものです。
カラフの360度、
銀フレームの文様は、シメールと植物文様を組み合わせ、
中央にメダイヨンを付け、シメントリーに仕上げています。
シメールはギリシャ古代神話に登場する、
鷲の頭にライオンの体躯で竜の尻尾に翼のある怪物で、
より古い時代では、他の動物を組み合わせ、
それぞれの動物が四季を表し、聖獣であったとも伝えられています。
守護の獣として装飾に取り入れています。
銀フレーム、シメールの表情もいきいきと、
模様に添って、細かい線彫刻が施してあります。
カラフの首にはクリスタルタイユで小さなトライアングルがあり、
ボトル部分には小さなダイヤモンドカットがあります。
銀細工のパリの工房刻印と、フランス銀刻印(800/1000)です。
グラスはお揃いの小さなダイヤモンドカットと、
足は6面にカットされ、クリスタルタイユをした楕円形の飾りがあり、
底には星形のクリスタルタイユがあります。
高さ10cmで、ワイン、リキュール、フルーツジュースなど使いやすいサイズです。
19世紀当時は、主に香り高いリキュール類に使われました。
銀細工フレームと、精緻なクリスタルタイユが魅力のセットです。
*カケ、割れなどなく画像通り綺麗ですが19世紀中後期のお品です。
フランスの800/1000の銀の含有率が高いお品ですので、すぐに黒くなったりはしにくい素材ですが、経年で銀の部分が曇るなどの場合は、銀用の磨き布で磨く、あるいは銀用の液体状のクリーニング剤でお手入れをして下さい。
食器洗浄機、乾燥器のご使用はお避け下さい。
*クリスタル・タイユ
回転板を回しながらクリスタルガラスを刻む技法。
ダイヤモンド、キャレ(四角)、エトワール(星)等の名がついた幾何学模様を中心とした非常に多くのバリエーションがあり、それらの凹凸を違え模様を組み合わせ完成したデザインが刻まれ、1つのオブジェへ各技法と技術毎に4〜5人の職人が携わり完成させる。
バカラは1824年に、水力エネルギーによる回転板技術を取り入れた最初の工房で、最も完成度の高いオブジェを創作するに至る。
* グラビュール / タイユ・グラビュール
模様に合わせサイズや形を変えた銅製の回転板を回しながらクリスタルガラスを彫刻する技法。
非常に小さなものをはじめ様々なサイズや形の銅製回転板の使用で、流線型の植物、人物など具象的で繊細な模様の表現がなされた。
瞬時に彫刻する鋭敏な感性と技術が必要で工房の中でもマイスターのみの仕事とされ、当時でも大変高価なオブジェでありアンティークの現存品は稀少。
バカラやサン・ルイ、クリシーで使われる最高難易度の彫刻技術でもある。
カメオ(陽刻)技法はルリエフ・グラビュール(レリーフ・エングレーヴィング)と呼ばれる。
* バカラ Baccarat
「バカラ」はフランスで1764年に創設されたクリスタルガラスのメゾンである。
アンティークの作品で18世紀中期から19世紀後期までに作製されたオブジェの多くはヨーロッパ王侯貴族や大ブルジョワによるオーダーメイドであった。
バカラの良さは、ヨーロッパで最高と言われる鉛含有率30-38%の質の高いクリスタルガラスのクオリティ、カッティングの美しさ、金彩やグラビュール(彫刻)、エッチングを施し、金や銀、ブロンズで装飾した重厚で繊細なオブジェのデザインにある。
* サン・ルイ Saint-Louis
「サン・ルイ」は16世紀からの歴史を持つフランスのクリスタルガラスのメゾンである。
1767年にルイ15世により王立クリスタルメゾンとして「サン・ルイ/Saint-Louis」の名が与えられ、以降バカラと共にフランスを代表するメゾンとして今に至る。
サン・ルイは、13世紀カペー王朝の「フランス王ルイ9世」の名から付けられた。
ルイ9世は、君主制をしきパリにサン・シャペル礼拝堂建設、多くの病院を創設し十字軍騎士の模範としてフランス史上最も高潔な王と言われ十字軍遠征により1270年に没後、1297年にローマ法王ボニファスより聖列に加えられ「Saint-Louis(聖王ルイ)」となった。
クリスタルガラスの質はバカラと共にヨーロッパ最高峰であり、フランス的な構築的で精緻なデザインが特徴の一つである。
N. 1075 シメールの銀彫金飾りカラフペア+4客グラスセット/アンティーククリスタル・フランスシルバー
フランス 19世紀中〜後期
素材:クリスタルガラス・銀(フランス銀刻印猪の頭800/1000)
工房刻印:パリの金銀細工工房刻印・工房名不明
サイズ:カラフ(2品)H20cm x 直径8cm グラス(4客)H10cmx 直径5.8cm
6品セット価格:10万円(別販売不可)
* お問い合わせの際は、お手数ですが上記の品番と品名をお書き添えください。